本稿では、現行の固定資産税が応益課税であるのか否かについて、実証分析と数値計算により検証する。具体的には、固定資産税の「Benefit View」の検証を通じて、固定資産税が応益課税であるのか、もしそうでないならば、地方分権が進み支出と固定資産税収とが完全にリンクした場合、応益性がどこまで確保されるのかとの点を明らかにする。数値計算の結果、現行の固定資産税は、居住者(=住宅消費者)にとっては応益課税となる一方、住宅所有者(=住宅供給者)にとっては応益課税でない可能性が示された。これは、地方の課税自主権が認められていない現行制度下においては、固定資産税収と公共サービス(=公共投資)とが完全にリンクしていないため、公共サービスが完全に資本化しないことが一因であると考えられる。一方、地方の課税自主権を強化し、公共サービスを固定資産税収ですべて賄うとの想定をおいたケースでの数値計算からは、住宅所有者の便益が正になり、住宅所有者にとっても応益課税となり得ることが示された。地域別で比較をするならば、現行制度を前提としたケースでは、居住者の負担は都市圏ほどゼロに近く、地方の課税自主権を強化したケースでは所有者の便益が都市圏ほど大きく、地方圏ほど小さくなった。これは、大都市圏ほど固定資産税が応益原則を満たす税となり得ることを示唆するものである。本稿の分析は、固定資産税は現状では居住者にとっては応益課税である一方、住宅所有者にとっては応益課税となり得ないものの、地方分権が進展し、地方の課税自主権を強化した場合には、住宅所有者にとっても応益課税となり得ることを示すものである。
Extent: | application/pdf |
---|
Series: | |
---|
Type of publication: | Book / Working Paper
|
---|
Language: | German |
---|
Notes: | Number 8 38 pages long |
---|
Classification: | H22 - Incidence ; H71 - State and Local Taxation, Subsidies, and Revenue ; H72 - State and Local Budget and Expenditures |
---|
Source: | |
Persistent link: https://www.econbiz.de/10004990970