本稿は、介護報酬引上げや介護労働者の処遇改善(事業所加算、助成金)等、介護労働力不足対策を立案する上で、必要不可欠の情報となる介護労働者の労働供給行動について実証分析を行った。具体的には、(財)介護労働安定センターが実施した「平成18年度介護労働実態調査」の労働者調査個票を用いて、訪問介護員の7割~8割、介護職員でも2割強を占める短時間労働者(パートタイム介護労働者)の賃金弾力性を計測した。分析の結果、賃金弾力性の値は負であり、訪問介護員で−0.5前後、介護職員で−0.4前後の値となることがわかった。これは、介護以外の一般的短時間労働者の場合と同様、税制や社会保障制度が作り出すいわゆる「103万円・130万円の壁」が、短時間介護労働者の労働供給を妨げていることに原因があると見られる。制度の影響を受けやすいサンプルと、受けにくいサンプルに分けた分析からも、この点を支持する結果が得られた。本稿の分析結果から、介護労働力不足対策について直接的に得られる政策的含意は、2009年4月から行なわれている介護報酬の3%引上げや、種々の処遇改善策については、その効果をかなり割り引いて見なければならないということである。少なくとも「既存の」短時間労働者については、仮に賃金が3%引き上げられるとすると、1.2%~1.5%程度の労働供給が減少することを覚悟しなければならない。
Extent: | application/pdf |
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Series: | |
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Type of publication: | Book / Working Paper
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Language: | Japanese |
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Notes: | Number 455 23 pages long |
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