労働供給弾性値はどのように変化したか? : マクロとマイクロの双方の視点から
本稿では、20~30代の女性の個票データを用いて、ライフサイクル・モデルに基づいた労働供給関数を構造推定し、異時点間の労働供給弾性値の1つであるFrisch弾性値が1990年代に変化した可能性を探ることを通じて、1990年代以降の女性の労働供給行動の変化がマクロ経済に与える影響について考察した。本稿の分析から得られた結果について整理すると、以下のとおりである。まず、20~30代女性の労働市場の参入・退出行動の変化を反映したFrisch弾性値は、個々人レベルでみた場合には低下傾向にある。特に未婚女性の労働市場の流出入の度合いは1990年代後半以降低下しており、労働市場へのアタッチメントは強くなってきていると指摘できる。また、ライフスタイルの変化による晩婚化や晩産化は、属性別構成比を変化させるため、マクロでみた平均的なFrisch弾性値を変化させることもわかった。こうしたライフスタイルの変化がマクロ経済に及ぼす影響は無視し得ないものであり、今後も注目していく必要がある。次に、労働者の労働時間の変化を反映したFrisch弾性値(「intensive margin」に相当)については、1990年代後半以降は個々人レベルでは労働時間に関するFrisch弾性値が変化した可能性は検出されなかった。このほか、1990年代の女性の労働供給行動には賃金の変化以外の反応として、就業意欲喪失効果や追加労働者効果が観察されたこともわかった。
Extent: | application/pdf |
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Series: | |
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Type of publication: | Book / Working Paper
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Language: | German |
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Notes: | 2007年11月 Number 339 43 pages long |
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