日本経済は、1990年の資産バブル崩壊以降、成長していない。実質金利がゼロであるにも関わらず(デフレが抑制)、株式市場は回復を見せず、失業率は、日本の基準から言えば、高止まりしている。当初、経済低迷の年月は「失われた10年」と呼ばれ、日本経済が回復しないのは、有効な経済政策の欠如によるというのが定説であった。しかし、大きな改善が見られないままさらに10年が過ぎた今、この年月は「失われた20年」と呼ばれている。この失われた20年の原因は、日本の社会と経済の根本的な側面にあるというのが、新たなコンセンサスである。本稿において私は、失われた20年の景気低迷は、第二次世界大戦後以降の日本の人口構成の変化、特に、低出生率と長寿化による高齢化がもたらした問題の症状であると主張する。人口が増加していて、労働の供給量が増加しながら市場が拡大しているときは効果的に機能していた社会保障制度、雇用慣習、政治制度などの制度を、新しい社会と経済に適応するように変えていないのだ。さらに、変化する年齢構成が、はらなければならないな経済調整に対して不利に作用し、資源は引き続き社会の高齢層に向けられてきた。高齢者の支援という重荷は、より少数の若年層が負わされ、社会を是正するには非常に難しい状況を生み出している。高齢者に敬意を払う日本の伝統は、高齢者から資源を奪うことを社会的に容認しないことを意味する。さらに、年長世代が、有権者層の大きな割合を占めているため、政治的に是正も困難にしている。最後に、日本の人口構成の先行きについて述べ、状況の改善につながると考えられる介入策について言及する。そのいくつかは日本特有のものであるが、ほとんどが、どの高齢化社会にも当てはまるであろう。日本は、人口構成の変化において、世界のリーダーである。いずれは日本と同じ道をたどる運命にある他国にとって、教訓になるのではないだろうか。
Extent: | application/pdf |
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Series: | |
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Type of publication: | Book / Working Paper
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Notes: | Number 592 [10]p |
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