本稿は、パラサイト・シングルという言葉が生まれて既に10年以上の年月が経過する中で、パラサイト・シングルやその両親の経済状況がどのように変容しているのか、国立社会保障・人口問題研究所が2007年に実施した「社会保障実態調査」の個票データを用いて分析を行った。主な結果をまとめると次の通りである。第一に、パラサイト・シングルの中年化が進み、30歳代後半、40歳代のパラサイト・シングルも広範に確認される。20歳から49歳までのパラサイト・シングルの総数は約1,030万人(男性約550万人、女性約480万人)と推計されるが、そのうち35歳から49歳の中年パラサイト・シングルは180万人ほど存在するとみられる。第二に、若いパラサイト・シングルほど、学卒時の非正規化が進み、年収が低い。また、中年パラサイト・シングルも、高齢化した両親へ経済的援助を行っている割合が高まっており、もはやパラサイト・シングルの暮らし向きが、それ以外の人々に比べて特に高いとは言えない。女性の中年パラサイト・シングルの中には、結婚をあきらめ、高齢化する親との同居生活が今後も続き、老後の備えの貯蓄や個人年金等を行っている人々も多い。第三に、パラサイト・シングルの両親の高齢化も進んでいる。パラサイト・シングルの父親の就労率は高く、特に60歳代前半の高齢就労率が70.3%と非常に高い。パラサイト・シングルの両親を合わせた年収額は、パラサイト・シングルを持たない親よりも高いが、貯蓄額はパラサイト・シングルの親の方が総じて低く、60歳代になってようやくパラサイト・シングルを持たない親に追いつき、やや追い越す程度である。このため、パラサイト・シングルの親の暮らし向きも、決してそれ以外の親よりも余裕があるわけではない。むしろ、年齢の高いパラサイト・シングルの親は暮らし向きが苦しく、生活水準が悪化していると答える割合が高い。パラサイト・シングルとの同居理由についても、中年パラサイト・シングルになると、「親の収入が少ない」、「親の介護が必要」といった親側の理由を挙げる割合が増加する。以上を総括すると、「学卒後も親と同居して基礎的生活条件を依存し、余裕のある生活を楽しむ未婚者」としてのリッチなパラサイト・シングル像は、この10年ほどの間に大きく変容したと言える。
Extent: | application/pdf |
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Series: | |
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Type of publication: | Book / Working Paper
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Language: | English |
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Notes: | Number 526 19 pages long |
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Source: | |
Persistent link: https://www.econbiz.de/10009358617