ヘクシャー=オリーン=サミュエルソン貿易理論と資本理論
本稿は、ヘクシャー=オリーン=サミュエルソンモデル(HOSモデル)の理論的発展をレビューする。ケンブリッジ資本論争における新古典派経済学に対する批判を受けて、HOS貿易理論がどのような反応を示したのかにとりわけ関心を向ける。Samuelson(1953)による一般均衡理論に基づくHOS貿易理論は、費用関数のヤコビアンを用いて要素価格均等化定理の成立条件を明らかにし、その後の研究の方向性に大きな影響を与えた。資本論争での1つの教訓は、資本が複数の再生産可能財から成る場合、限界生産力説が一般的には成立しないことであった。同様に、国際貿易理論の文脈でも、標準的なHOSモデルの様に資本を1つの本源的生産要素と取り扱うのではなく、複数の再生産可能財から成ると見做すならば、資本を複数の再生産可能な財からなるものとしてより適切に定式化された下では、2財の世界であれ、それ以上の財の存在する世界であれ、一般的に要素価格均等化が実現しない事を本稿は示す。資本論争での批判を受けて、Burmeister(1978)は資本が本源的生産要素ではなく再生産可能財から成る場合の要素価格均等化の成立条件の特徴づけを行ったが、彼が提示したモデルは資本論争で提起された問題を回避していることを示す。以上の議論は、既存の標準的なHOS貿易理論とは異なって、要素価格均等化の実現を前提とせずに、資本を複数の再生産可能な財からなるものとしてより適切に定式化された下での国際貿易の基礎理論を新たに再構築する必要性を示唆している。
Extent: | application/pdf |
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Series: | |
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Type of publication: | Book / Working Paper
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Notes: | Number 622 56 pages long |
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Classification: | B51 - Socialist; Marxian; Sraffian ; D33 - Factor Income Distribution ; F11 - Neoclassical Models of Trade |
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Source: | |
Persistent link: https://www.econbiz.de/10011262854