本稿は、不動産市場が経済活動に影響を及ぼす経路である銀行貸出のチャネルに注目し、不動産価格の変化が銀行貸出にもたらす影響を、リーマンショックの時期を含む2007年から2013年にかけての日本の銀行レベルデータと、公示地価や不動産取引価格に関するデータとを用いて明らかにする。本稿の特徴は、銀行の取引先企業の立地を踏まえた不動産価格を計測する点と、銀行が担保評価を行う際に重視する公示地価だけではなく、実際に不動産が売買された価格を用いて銀行貸出への影響を計測する点にある。得られた結果は以下のとおりである。第1に、不動産担保評価に広く用いられてきた公示地価に基づいて銀行が直面する不動産価格を算出する場合、その上昇(下落)は、銀行の自己資本比率を上昇(低下)させてその資金制約を緩和(厳格化)するだけでなく、不動産関係貸出や総貸出の増加(減少)をもたらす。一方で、不動産価格が不動産関係以外の貸出に及ぼす影響は比較的小さい。第2に、実際の取引価格に基づいて銀行が直面する不動産価格を算出すると、公示地価を用いる場合とは反対に、不動産価格と不動産関係貸出との間に負の相関が生じる。このことは、銀行が公示地価上昇(下落)を踏まえて不動産関係貸出を増加(減少)させても、現実の不動産取引価格は下落(上昇)していた可能性を示唆する。
Extent: | application/pdf |
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Series: | |
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Type of publication: | Book / Working Paper
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Notes: | Number 16 30 pages long |
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Source: | |
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