海外進出の決定要因及び現地法人のパフォーマンスに関する実証分析−−日本の食品関連企業の海外直接投資
本研究は、日本の上場食品関連企業の海外直接投資先をタイ、タイ以外のアジア、その他海外、海外投資なしに分けて投資行動を分析し、どのような上場食品企業がタイへ進出する傾向にあるのかを分析した。その結果、生産性と収益性が相対的に低い企業がタイへ進出し、現在にいたるまで撤退せずに現地法人の経営を行っていることわかった。この点への解釈として、タイへ進出している企業は国内のみに特化した経営戦略では業績が芳しくないため、当該国への進出を決定し現地法人への投資を続けているのではないかと考えられる。次にこうしたタイに進出した日本の親企業のパフォーマンスが、現地子会社の生産性に影響するかどうかを検討した。その結果、生産性が高い親会社ほど現地子会社の従業員一人あたり売上高も高いという結果を得た。しかも、現地子会社のパフォーマンスは、親企業の短期的な生産性ショックではなく長期的な親企業の生産性に依存している。本研究の分析結果と総合すると、タイに進出する日系食品企業は、その他の日系食品企業と比べて生産性や収益性が低い企業であるが、タイに進出している企業間で比較すると、日本の親企業の生産性が高いほどタイの子会社の生産性も高いという関係が見いだせる。このことは、食品産業空洞化で日本の親会社の業績が低迷し、研究開発への投資を怠った結果として親企業の生産性が低迷すると、タイの現地小会社の業績も悪化するということを意味する。
Extent: | application/pdf |
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Series: | |
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Type of publication: | Book / Working Paper
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Notes: | Number 573 30 pages long |
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Source: | |
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