生涯医療費の推計 : 国保・健保レセプトデータによる分析
近年、わが国では医療保険制度の抜本的な改革が取り沙汰され、それに伴い、医療保険制度における世代間の公平性の議論がなされている。しかし、この議論を行うためには、加入者の生涯にわたる医療費支出を把握することが政策的に極めて重要である。本稿では、4道県国保と3組合健保の7保険グループのレセプトデータを使用し、2つの方法で生涯医療費の推計を試みた。その結果、当該年度に一生涯を終えると仮定し、医療費に対して平均寿命を用いる方法では、『厚生白書』で示されていた約2,200万円という推計結果に対して、北海道・福岡で約2,300~2,500万円、その他のグループで約1,500~1,900万円という結果が得られた。また、レセプトデータに(生存者のそれとは異質な)死亡者の医療費が含まれていることを考慮し、特定可能な死亡者の終末期1年の医療費を平均医療費に差し替えた推計では約1,390万円と生涯医療費は減額される結果となり、終末期医療費が医療費全体に大きな影響を及ぼしていることがわかった。これは、推計の過程で、老年期に集中する終末期医療費が、保険グループ総医療費の約20%を占めており、85-100歳階層では約40%に達していること、死亡者の終末期1年の医療費は、生存者のそれに比べて、全年齢平均で27.9倍、70歳以降でも5.3倍に達することからも裏付けられた。本稿で得られた、平均的な個人の生涯医療費の推計結果は、保険料と医療費支出のバランスされた医療保険制度の構築や、今後の負担の公平性の議論にも示唆を与え得るものと考える。
Extent: | application/pdf |
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Series: | |
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Type of publication: | Book / Working Paper
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Language: | English |
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Notes: | Number 174 15 pages long |
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Source: | |
Persistent link: https://www.econbiz.de/10005018516