誰が受診を控えているのか:J-SHINEを使った初期的分析
医療サービスの受診抑制は、「国民皆保険」の精神に反する医療制度の重大な危機である。しかしながら、人々がどのような理由で、また、どれくらいの頻度で医療機関に行くことを抑制しているのかについては、詳細な分析が乏しい。本稿は、日本における受診抑制の発生状況とその要因を解明しようとした先行研究をレビューし、その上で「まちと家族の健康調査」の個票データにもとづき、成人(20~59歳)の受診抑制の有無とその理由について初期的分析を行った。先行研究からは、受診を抑制したと感じている人は相当数存在し、この率は、勤労世代では(主観的に)健康でなかった人のうちの30%から50%程度と推測されること、所得階層によって、受診抑制したと感じる人の割合は異なること、受診抑制の理由として、金銭的な理由が挙げられることが多いものの、時間的な制約も大きい要因となっていること、がわかった。「まちと家族の健康調査」の分析からは、勤労世代(25~50歳)の男性34%、女性37%において本人の選好によらない受診抑制が発生していた。受診抑制の理由別に受診抑制を経験した人を分類すると、「時間的制約によるもの」「経済的制約によるもの」「両者によるもの」の3つに分類され、地理的・物理的理由は極わずかであった。時間的制約がある人と、経済的制約がある人は、全く異なる属性を持つと考えられがちであるが、必ずしもそうとは言えず、時間的制約と経済的制約の両者を抱える人が非正規雇用者等を中心に多いことがわかった。また、時間的制約のみを抱える人は、正社員のみならず、育児を抱えている人が少なくない。経済的制約のみを抱える人は、世帯所得等から見ても特異であり、従来の「貧困層」を彷彿させる属性であった。
Extent: | application/pdf |
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Series: | |
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Type of publication: | Book / Working Paper
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Notes: | Number 603 [16]p |
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Source: | |
Persistent link: https://www.econbiz.de/10011106503