分配問題としての長時間労働 : 「即戦力」志向の影で
1990年代から2000年代初めに増えた長時間就業の背景を『就業構造基本調査』(1992、1997、2002年)より実証分析した。20歳以上49歳以下の男性正社員のあいだで、ふだんの一週間に60時間以上働く人々は急増した。長時間労働者の7割以上は、会社への継続就業を希望しているが、継続を望みつつも労働時間を減らしたい人々が全体の4割以上を占める他、離転職を希望する比率も増えていた。個人属性別では、2002年に30歳代と大企業就業者で長時間労働が拡大した他、重要な発見として、勤続10年未満の短期勤続層ほど週60時間以上就業を担う傾向が強まっていた。勤続2年から5年といった短期勤続層は転職志向が本来強いため、長時間労働化は離職に拍車を掛けた。離職志向の理由として、勤続2年未満の短期勤続層ほど業務の時間的・物理的負担の高まりがみられた。一方、継続就業希望でも、1992年までは30歳代や勤続10年未満層で就業時間の削減を望む声は少なかったが、2002年には年齢や勤続による差も消失するなど、短期勤続層へ業務負担が集中する傾向が別途垣間見られた。失われた10年と呼ばれた時代、長時間労働の背景となる多大な業務量が入社後まもない層へと偏向した。この時期、新規学卒者や転職者の採用条件として巷間呟かれた企業の「即戦力」志向の強まりもまた、技術革新や事業刷新などの影響により、正社員求人の条件が長時間労働を即座に担い得る人材へシフトしたことを、本稿の結果は物語っている。
Extent: | application/pdf |
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Series: | |
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Type of publication: | Book / Working Paper
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Language: | Japanese |
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Notes: | Number 436 24 pages long |
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Persistent link: https://www.econbiz.de/10004983605