高齢者の同居家族の変容と貧困率の将来見通し—結婚・離婚行動変化の影響評価—
公的年金制度をはじめとするわが国の社会保障制度は、ほとんどの男女が結婚し、離婚はまれであり、夫は正社員、妻は専業主婦という家族をモデルとし、そのようなモデルに対してうまく機能するように設計されている。しかしながら、1970年代後半以降、生涯未婚率の上昇や離婚率の上昇など、大きなライフスタイルの変化によって、このような家族モデルは崩壊しつつある。ところが、このような変化は、当時の若い世代に対して起きたものであり、現時点の高齢者には、まだその変化が及んでいない。そのため、足元では、現行の公的年金制度は非常にうまく機能しており、高齢者の貧困率もそれほど高くないため、問題意識が十分に形成されていない。公的年金制度への関心は高いが、超高齢社会における制度の持続可能性の論点が中心であり、家族モデルの変容への対応あるいは十分性に関する議論は深まっていない。本稿では、ダイナミック・マイクロシミュレーションモデルINAHSIMを用いて、高齢者の貧困率の将来見通しを示すとともに、結婚・離婚行動の変化が、将来の高齢者の貧困率の上昇にどの程度寄与したのかを定量的に評価する。その結果、家族モデルの変容は、高齢女性の貧困率には大きな影響を及ぼすが、高齢男性にはほとんど影響しないことが明らかとなった。
Extent: | application/pdf |
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Series: | |
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Type of publication: | Book / Working Paper
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Notes: | Number 586 25 pages long |
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