1976-2001年タイムユーズ・サーベイを用いた労働時間・余暇時間の計測 : 日本人は働きすぎか?
本稿では、『社会生活基本調査』(総務省:1976、1981、1986、1991、1996、2001年調査)の個票データを用いて、高齢化、高学歴化、有配偶率の低下、少子化、自営業率の低下等、人口構成・ライフスタイルの変化を調整したうえで日本人の平均労働時間・余暇時間の計測を行い、過去25年間における時間配分の推移を観察した。分析の結果、以下のとおりいくつかの興味深い点が確認された。第1に、日本人の週当たり労働時間は、1976年から1986年にかけて増加したのち、1986年をピークに緩やかに低下しており、この傾向は、増加・減少幅に多少の違いはあるものの、有業者・雇用者・フルタイム雇用者1人当たりのどのレベルでみても、男女別でみても同様に観察される。第2に、フルタイム男性雇用者の労働時間の時系列的推移を詳細にみると、属性別に異なって変化しており、具体的には教育水準では大卒、年齢層では30代、企業規模では1000人以上の大企業では1986年以降週当たり労働時間はほぼ横ばいであったのに対して、高卒以下、30代以外、中小企業では1986年以降の労働時間の低下が顕著である。つまり、フルタイム男性雇用者間でも労働時間にひらきが生じていることが示唆された。第3に、曜日別でみると、月曜日から金曜日の平均1日当たり労働時間は30代・大卒については1976年以降趨勢的に増加を続けており、過去25年間で1日当たり1時間程度の増加がみられた。また、30代フルタイム男性雇用者の所得との関係は、1986年以降、高所得層ほど労働時間が増加していることが確認された。さらに、日米のタイムユーズ・サーベイを用いて両国の労働時間を比較したところ、日米間には週当たり7.5時間程度のひらきがあること、したがって日本人の時間当たりの生産性は米国に比べて相当程度低い可能性を指摘した。最後に、日本人の余暇時間を計測し、1986年以降は通勤時間や家事労働などの家計生産時間が低下した結果、労働時間の減少以上に余暇時間が増加したことが確認された。この点は、労働時間だけを観察していても、ワークライフ・バランスの「ライフ」の動向を必ずしも把握できないことを示唆する。
Extent: | application/pdf |
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Series: | |
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Type of publication: | Book / Working Paper
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Language: | English |
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Notes: | Number 377 52 pages long |
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Source: | |
Persistent link: https://www.econbiz.de/10005018276